ケア提供時における利用者の健康状態や感情によっては、一般的に問題とされない事柄でもクレームとして申し出を受けるケースが考えられます。利用者の機嫌を取り戻そうと介護職単独の判断で対応しがちですが、単独での対応では言った・言わないのリスクが伴います。利用者のプライバシーを守る観点から録音・録画によるケア状況の記録が普及しておらず、利用者と介護職とのやりとりを立証する方法は両者の証言に限られるのが現状です。
一方、行政の実地指導では書面による介護記録をもとにケアの適切性を判断されるため、普段からケア内容を詳しく記録しておくことが介護の「見える化」につながり、クレーム事案を精査する際にも役立ちます。
また、ケアプランや介護保険法から逸脱しない範囲でクレーム対応にあたることも大切です。介護職が利用者と交わした約束は、個人としてではなく事業所(組織)としての約束と解釈されます。その場で良かれと思って行った対応でも、ルール違反の事項があればケア全体が不適切とみなされ、利用者との関係性が回復した場合でも事業所がペナルティを受けるリスクが高まります。
そのため、クレームを受けた場合は事の大小に関わらず速やかに上司や管理者に報告し、組織的に対応方針を決めることが大切です。対応の客観性が高まりますし、自分の身を守ることにもつながります。利用者や家族の言葉をありのまま記録しておくことも、法的問題に発展した場合のリスク回避につながるでしょう。